曾祖父の眼力の続き
https://www.rescue-119.jp/news/archives/1784
↑こちらの記事のスピン・オフになります。
曾祖父の眼力
これが先に述べた、古墳時代研究の歴史上の価値(先駆的事例)に相当するのです。すなわち、前方後方墳の□と□の形状、目に見える真実を①認識して②言語化し、③文字記録として後世に残した日本で最初の人物は松山鶴吉(世襲名は松山忠左衛門)だったことを意味します。塚田博士によれば、前方後方墳の考古学的に確実な文献は、大正14年4月に刊行された島根県史・第4巻とされます。(同巻の執筆担当:野津左馬之助氏)。大正5年当時の創意工夫による「コマ塚」の文字記録は、学術レベルなら10年、民間レベルでは50年先駆けていていましたが、これまでに学術的検証はされていません。そのあまりの先駆性は記事主も驚嘆しますが、「コマ塚」の記載による、墳丘形状の確認の要件は満たされているとしても、
①墳丘(人工の盛土か、自然の墳丘か)の確認
②埋葬施設(石棺)の存在、内部構造の調査
③遺物(年代測定の手がかり)
④測量調査(緯度経度の特定、精密な墳丘図の作成)
⑤発掘調査
⑥科学的年代特定
⑦考古学的な型式学的研究
以上①~⑦に加え、⑧学会におけるプロセスを踏んでいません。
学術的に検証されることがなかったのは上記や、その他さまざまな理由があると思います。大正5年の一般の人に、現代の要件をそのまま求めるのは、…と思わなくもありませんが、しかし考古学には長年積み上げてきた科学的分析によるフォーマットがあって、それこそが永続性・信頼性そのものなのです。これは法律とよく似ています。現代の民事裁判における契約や財産に関するフォーマットは、2000年前のローマ時代に原型ができていたものが、膨大な判例という歴史的な積み重ねを経て条文形成されたものです。民法192条で例えると即時取得の要件は
①動産であること
②取引行為であること
③平穏・公然であること
④善意・無過失であること
⑤占有を開始したこと ※判例上、占有改定は不可。
※推定される要件(法律上の推定)
・平穏・公然・善意: 186条1項により、占有者はこれらの要件を満たしているものと推定。
・無過失: 最高裁の判例により、188条の「占有者が占有物の上に行使する権利は適法に有するものと推定される」規定を根拠に、無過失も推定(最判昭41.6.9)。
口頭弁論において、これらの要件が尋問により証拠として採用されず、即時取得が裁判長に認めてもらえない場合、 敗訴とはいかないまでも、裁判長の心証は良くはならないでしょう。
思うに、考古学者は一人一人が、歴史の弁護士であり、検事であり、裁判官でもあるので、
(以下40行中略)
…民法風の言い回しなら’「コマ塚」の記載によって、墳丘形状の確認がされたものと推定される’のです。これで十分です。きっとあの世の曾祖父も理解し、納得していることと思います。
「男の勝負は亡くなってから」(西岡常一)
真意が理解されるまで110年かかりましたが、結果的に巨大古墳群・巨大環濠集落発見による狗奴国の疎明と、邪馬台国の近畿説の推認にまでつながっているです。「コマ塚」はたったの三文字ですが、三文字をあなどってはなりません。忠左さんの「創意工夫に基づく三文字はビッグバンの核(コア)に成り得る」という後世に残る好例になったと解します。



